死亡後の預貯金、家族はお金を引き出せる?凍結解除の手続き

銀行や郵便局はお金を預けている口座の名義人が死亡すると、名義人の口座の取引すべてを中止します。これは口座凍結とも呼ばれますが、名義人の口座が凍結されてしまった場合、預金の引き出しもできなくなるほか、引き落としも停止してしまいます。

遺族や親族といえども、故人の預貯金を自由に引き出すことはできませんので、死亡によって預貯金の口座が凍結された場合は「相続」の手続きが必要となります。どのような手続きを取れば口座の凍結を解除できるのでしょうか。

夫の死亡後に夫の預金を引き出す方法

夫の死亡後に夫の預金を引き出す方法 凍結された口座が「家計のお金」をやりくりする口座だったら一大事!電気やガスなど生活に必要な料金が引き落としされる口座が凍結されてしまったら、生活もままならなくなってしまいます。

こちらの記事では、48歳の主婦Bさんの事例を一部改変しながら、凍結された故人の口座から「葬儀費用」などを引き出したり、凍結を解除するための方法を解説します。

48歳・主婦Bさんのケース

Bさんは48歳の主婦です。Bさんのご主人が突然亡くなってしまい、ご主人の銀行口座は凍結されてしまいました。Bさんや家族は死亡したご主人の預金口座からお金を引き出すことができるのでしょうか?

結論から言えば、死亡したご主人の凍結された口座から引き出すことができるのは「葬儀費用」か、もしくは「当面の生活費」に限られます。

Q : ご主人の死亡後、妻や家族はお金を引き出せる?

A : 葬儀費用もしくは当面の生活費ならば引き出し可能

故人の預金は相続財産にあたるため、死後に口座が凍結された場合は、たとえ家族であっても自由に引き出すことはできなくなります。当然、預金から葬儀費用や生活費を捻出しようとしても難しくなりますが、口座の凍結解除には対応方法があるのか、事例をもとに解説します。(事例は一部改変しています)

そもそも故人の預貯金の口座はいつ凍結されるのか

故人の口座は「銀行が口座名義人の死去を知ったタイミング」で凍結されるため、いつとは一概に言えないのが現状です。役所に死亡届を提出したことで凍結されるわけではなく、なかには凍結されないケースもないわけではないようですが、銀行は何らかの理由で口座名義人の死去を知ると、お金の出し入れができないように故人の口座を凍結することになります。

口座凍結後も葬式費用ならば引き出し可能

口座凍結後も葬式費用ならば引き出し可能

銀行が故人の死去を何らかの形で知り、故人の口座が凍結されたとしても、「故人の葬式費用」ならば銀行は一定額まで引き出しに応じてくれます。

引き出しに応じてくれる金額は100万円から150万円ほどで、金融機関によって金額は異なりますが、Bさんは所定の手続きを行うことで、ご主人の預金から葬式費用を無事に支払うことができました。

また、生活費についても、故人の口座ですべてを管理していた場合などは口座が凍結されたままでは生活ができなくなりますので、銀行側も一定額までならば引き出しに応じてくれるでしょう。

葬式費用や当面の生活費を引き出す際の必要書類

葬式費用や当面の生活費を引き出す際の必要書類

凍結された口座からお金を引き出すうえでは、銀行の窓口で書類の提出が必要となります。一般的には、

  • 1. 法定相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 2. 法定相続人全員の印鑑証明
  • 3. 故人の戸籍謄本(除籍・改正原戸籍)
  • 4. 口座の通帳、カード、届け印

が必要となります。必要となる書類などは銀行によって異なりますので、まずは銀行の窓口に問い合わせましょう。Bさんの場合は、法定相続人が妻のBさん、2人の子どもだったため、3人全員の戸籍謄本や印鑑証明が必要でした。

葬式費用以外の預金引き出しは可能?

葬式費用以外の預金引き出しは可能?

では、葬儀費用や生活費以外の用途として、死亡したご主人の口座からお金を引き出すことはできるのでしょうか?

結論から言えば、こちらは法定相続人の数や遺言の有無によって変わりますが、故人の預金は相続財産にあたるので、故人の葬式費用や当面の生活費を除けば引き出すことはできないと考えておきましょう。

Q : 故人の預金は自由に引き出せる?

A : 相続財産にあたるため、凍結解除には相続手続きが必要

Bさんのご主人は突然亡くなってしまったため遺言書などは残していませんでした。そのため、ご主人の預金は葬式費用を除いた額が相続の対象となり、相続順位に応じて分割されることになり、相続の手続きを行わないかぎりは家族といえども自由に引き出すことはできなくなります。

口座凍結を解除する方法と手続きの流れ

口座凍結を解除する方法と手続きの流れ

相続財産である預金について、相続の手続きを進めることで口座凍結を解除することができます。口座凍結を進めるにあたって必要となる流れは、

  • 1. 銀行に対して相続する旨を申し出る
  • 2. 銀行から相続手続き書類を受け取る
  • 3. 相続手続き書類への記入、提出
  • 4. 指定口座への振り込みによる受領

という流れになります。また、遺言書の有無のほか、遺産分割協議書や遺言執行人の有無によって、必要な書類は異なってきますので、こちらも銀行の窓口に確認しましょう。相続人同士で分配をめぐって揉めたりすると全体の手続きがスムーズにいかなくなるので要注意です。

Q : 故人の預貯金の凍結解除にかかる日数は?

A : 全ての書類を窓口に提出してから2週間ほどで相続手続きが完了することが一般的です。

故人の口座は葬儀費用以外には手を付けない

故人の口座は葬儀費用以外には手を付けない

故人の口座は相続財産にあたりますが、故人の口座から引き出したお金を葬儀以外に使ってしまうと相続時に「単純承認(たんじゅんしょうにん)」と見なされ、「限定承認・相続放棄」ができなくなる可能性があるので要注意です。

「単純承認」とは、資産も債務もすべて相続するというものです。故人の預金口座に1000万円あっても、借金が2000万円あった場合は差し引き1000万円のマイナスですが、「単純承認」となると債務もすべて相続しなければならなくなります。

なお、故人の葬儀にかかる費用については故人の口座のお金を充てても「単純承認」には見なされることはありません。

故人が家計の口座を管理していた場合はどうすれば良い?

故人名義の口座の場合は上述の手続きで口座凍結を解除することができますが、仮に故人が夫もしくは妻名義の預貯金を管理していた場合はどうすれば良いのでしょうか。この場合、名義人が存命中で、かつ通帳と印鑑があれば特に問題はありません。

要注意なのは、配偶者の資産も含めて、故人が故人名義の口座で管理していた場合です。仮に配偶者の資産であっても、それを管理していた口座が故人の名義だった場合は、やはり遺産相続人との間で遺産を分割する対象となってしまうためです。こうした曖昧な管理は相続トラブルにつながるものです。

終活という観点から言えば、やはりお金をめぐって家族や親族が揉めないよう、家族の誰がお金を管理しているのか、そのお金は誰の名義の口座に入っているのか、事前に家族間で話合っておくのが良いでしょう。

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