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死後離婚とは一体何?何を目的とした手続きなのか

民法では、配偶者が亡くなると自動的に婚姻関係は消滅するとされています。しかし、配偶者の血族との「姻族としての関係」は消滅せず、配偶者の死亡後もその関係は引き続き継続されることになります。死後離婚を選ぶ人の理由はそれぞれ違いますが、
- 死後離婚とは、存命中の配偶者が故人の血族との姻族関係を終了させることを指します。
では、死後離婚はどのような手続きをすれば成立するのでしょうか。手続きについては非常に簡単ですが、死後離婚をすることによって、存命中の配偶者の生活には変化が生じる可能性もあるんです。
死後離婚の手続きの方法とは? 提出するのはどんな書類?

死後離婚の手続きに必要な書類は「婚姻関係終了届」です。市区町村の役場窓口にあるほか、自治体によっては自治体のホームページから姻族関係終了届をダウンロードできる場合がありますので、記入して「届出人の本籍地もしくは住んでいる市区町村役場に提出」しましょう。
死後離婚には相手側の同意や許可は必要ありません
この届出は残された配偶者のみの意思決定で行うことができますので、亡くなった配偶者の血族に許可をもらったり、同意を得たりする必要はありません。また、届出は姻族関係を終了させようとする、残された配偶者のみが提出する権利を持っているので、亡くなった配偶者の親族側が提出することはできません。なお、亡くなった配偶者と子どもとの親子関係が解消されることもありません。
- ・婚姻関係終了届を自治体の役場に提出する
- ・死後離婚には亡くなった配偶者の血族の許可や同意は不要
- ・死後離婚をしても子どもとの親子関係は消えない
死後離婚の手続きに必要な書類は?
提出に必要なものは「婚姻関係終了届出書」と、配偶者の死亡事項が記載されている戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、届出人の印鑑が必要になります。届出の提出期限などはありませんが、届出地に本籍がない場合は戸籍全部事項証明書が必要となる場合がありますので、事前に届出地の自治体ホームページで確認するか、問い合わせを行っておくと良いでしょう。
婚姻関係終了届出書に関するまとめ
根拠法令 | 戸籍法第96条、民法第728条 |
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法律上の効力が生じる日 | 届出をした日から発生 |
届出地 | 届出人の本籍地、住所地、所在地(居所や一時滞在地) |
届出人 | 生存配偶者のみ(姻族関係を終了させようとする者) |
必要書類 | ・婚姻関係終了届 ・配偶者の死亡事項が記載されている戸籍全部事項証明書(除籍全部事項証明書) ・現在の届出人の戸籍全部事項証明書(届出先に本籍がない場合) ・印鑑(届出人のもの) |
死後離婚によるメリットやデメリット
死後離婚をする場合とそうでない場合では、どのような違いがあるのでしょうか。まずは死後離婚によって変わることから説明します。
死後離婚のメリット、変化が生じることとは?

婚姻関係を終了させると、義父や義母に対する扶養義務が無くなります。一般的には義父や義母の実子が面倒を看ることがほとんどでしょうが、そうではない場合は扶養義務が生じる場合もあります。また姻族関係が消滅するため、配偶者や配偶者親族のお墓に入ることもなくなるのが一般的です。
死後離婚後も遺族年金や相続の権利は消失しません
配偶者の生前に離婚した場合は遺族年金をもらうことはできませんが、死後離婚の場合は影響されることなく受け取ることができます。また遺産相続についても、配偶者が亡くなった時に婚姻関係が成り立っていた場合は生存配偶者が法定相続人として定められているため、婚姻関係終了届を提出して姻族関係でなくなった場合でも相続権は維持されます。ただし遺産相続は遺言状の内容によって左右されることは覚えておいた方が良いでしょう。
死後離婚のデメリット、変わらないこととは?

次に死後離婚をしても変わらない点としては戸籍や姓が挙げられますが、デメリットらしいデメリットはないと言えます。また、婚姻関係終了届を提出しただけでは戸籍や姓までは変わらないため、旧姓に戻したり戸籍を別にしたい場合は「復氏届」を市区町村役場に提出する必要があります。復氏のための手続きについては、「旧姓に戻すための手続き方法」を解説した記事を参照してください。
また子どもの姓と戸籍も変えるためには家庭裁判所への提出が必要となります。
死後離婚の理由は人それぞれ、しっかりと熟考を
死後離婚をした場合の問題点としては、やはり亡くなった配偶者の親族との関係を保てなくなることでしょう。故人の法要などへ参列が難しくなることが想定されます。また、子どもがいた場合の義父や義母との関係をどのように対応していくかも考える必要があります。
生前に配偶者や配偶者親族との関係が良好でなかった場合、また関係は良好でも生まれ育った実家で余生を送りたい場合など、死後離婚を選ぶ理由は人それぞれです。配偶者が亡くなった後の自身の人生をどのような形で送っていくのか、ゆっくりと考えてみるのも良いかもしれませんね。